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モロコの歯ぎしり

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2023.06.14日々雑感

小鮎の季節

「小あゆ、炊いたえ」
外から戻ってくると、台所から母の声がした。
― そうか、今が旬やった。
琵琶湖のひき網漁で捕る小鮎は一口サイズの小さな魚。柔らかくて少しほろ苦く、山椒と醤油で炊くとおいしい大人の味覚。毎年この時分になると母が作る。
鍋の蓋を取るとプンとふくよかな匂いがして、小鮎がびっしり並んでいる。かなりある。
― なんで全部炊くわけ?なんで半分天ぷらにせえへんかなあ。二人で食べきれへんがな…と言いたいのをぐっとこらえて「いやぁ、おいしそうやん」と言ってみた。私もこの三か月で学習した。自分の気持ちを整理しながら、菜箸で小鮎を一匹ずつ小鉢に盛り付ける。
「洗うときに数えたら148匹あったわ」ベランダから母が言った。
あきれて笑いがこみあげる。私は残りの小鮎をざっと大鉢に盛った。あ〜あ、今日も明日も、もしかして明後日も小鮎に追いかけられそうだ。
(2018年6月 記)
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