一会和堂セミナーハウス

国内外の旅行者に観光と文化体験プログラムを提供

一会和堂セミナーハウス

お問合わせ&アクセス
「和堂」の大津絵ショップ

われも湖の子

われも湖の子
Entry#12

実は饒舌、大津町家の宿 “粋世女将”

奥村さん(おくむら)

「大津町家の宿 粋世(いなせ)」は、昭和初期に建った元米穀商の町家を改修した登録有形文化財の宿である。文化財ゲストハウスと銘打っている。オーナーである湖北設計さんが自ら手掛けたとあって、古いものを大胆に取捨選択して造り直すと、日本家屋の美しさをこんなにも引き出せるのかと驚く。解体から再設計、細部のこだわりに至るプレゼンテーションは実に興味深い内容だった。建築や古民家が好きな人には堪らない宿だと思う。客室は離れも含めて5室と決して大きな宿ではない。しかし、その分無駄がそぎ落とされ、手入れと気配りが行き届いている。
 粋世に足を踏み入れると、あちらこちらに建築説明が日英併記で掲げられている。「ササラ天井」の説明に目を凝らしていると、奥村さんが後ろから説明してくれる。この人はこの町家が本当に好きなのだというのがよくわかる。粋世がオープンしたのは 2017年4月。それ以来マネージャーを務めているのが、作務衣姿が堂に入った奥村さんだ。
 初めてお会いした時から、奥村さんはいつもこちらの発言をかなりの集中力を持って聴き、的確な答えを返してくる人だと思っていた。実は奥村さん、前職もインバウンド観光客が毎日何百人とやってくる京都の宿に10年勤めていたという。話し手の最初の音を聞き逃すまいという集中力はそこで磨かれたのだと妙に納得した。いつも空気を読んで、必要な情報発信を着実にしてくれる人だ。
 奥村さんは滋賀県の甲賀出身。多くの若者同様、彼女も地元を飛び出す。外国に憧れワーキングホリデーでニュージーランドに一年滞在し、その後もバックパックで世界各地を旅した。帰国してからは持ち前の英語力を活かすべく、古民家一棟貸しもしている京都のホテルで職を得る。オーバーツーリズムという言葉が飛び交う前の京都の観光ブームは凄まじかったという。
「その渦中にいた人がなんでまた大津の町家の宿に?」
「もっと丁寧にお客さんに対応したくなったのです。当時、そんな時間はないほど忙殺されていましたから」
日々業務をこなしてただ消耗していることに疲れたとき、粋世の人材募集があったのだという。外から日本を見て日本の良さに気付いたのは彼女自身だが、その眼識を育ててくれたのはやはり京都だったのかもしれない。古民家への愛着が増す一方で、京都人の中で働くうちに自分のアイデンティティがムクムクと持ちあがってきた転機だったのだろう。
「どうすれば来られた方の満足度を上げられるか、それを考えるのが好きなんです」
今や情報発信は簡素で写真中心のSNSだが、書き溜められた「粋世女将」のブログを読んでいると、奥村さんの研究熱心さ、創意工夫が伝わってくる。適材適所だと改めて納得する。
粋世さん、本当にいい人をマネージャーにしたと思いますよ!

粋世さんのもっといい写真はホームページでご覧ください。('◇')ゞ

(2022年9月7日 記)

実は饒舌、大津町家の宿 “粋世女将” 奥村さん
TOPへ