セカンドキャリアで ”居場所カフェ” を開く
西田 久美子さん(にしだくみこ)
三井寺表坂近くのお寺に「カフェmanma」がオープンしたのは2020年2月。このお寺はいつの頃からか人が住まなくなり、地蔵盆のときに束の間にぎわうくらいで近隣住民も遠巻きに見ていたお寺だ。ところが、令和に入ったある日突然工事が始まり、気が付いたらいい具合にお寺の雰囲気を残したアットホームなカフェに生まれ変わっていた。
オーナーの西田久美子さんは大津出身で、30年以上にわたり就学前の保育や教育に携わっていた人だ。明日都浜大津にある子育て総合支援センター「ゆめっこ」の創立メンバーでもある。久美子さんがあっという間に子供たちの心をつかむ様子を見ると、さもありなんである。
保育園職員を早期退職したとはいえ、そのキャリアを引き続き追及することもできたのに、どうしてカフェをオープンすることにしたのだろう。
「自分がハッピーになれることが好きです。私が目指すみんながくつろげる ”居場所カフェ” は、これまでの自分の人生経験がすべて活かせるのです」
久美子さんは居場所カフェオープンの構想を15~16年前から温めていた。今の場所にたどり着くまでに、なんと100か所以上の物件を見たというから驚きだ。最終的に三井寺周辺が気に入り、「老若男女、みんなが集える場、人と人をつなぐ場を作りたい」という熱い想いを手紙にしたため、三井寺の福家執事長(現長吏)に送った。福家執事長にこのお寺を提案されたとき、いささか荒れてはいたもののやはりピンとくるものがあり、その場でウッドデッキなどのイメージが湧いてきたという。やはり運命の出会いだったのである。
「食べることは命の源」と言う久美子さん。ご実家が魚屋さんで、物心ついたときには下処理や仕出しの手伝いをしていたというのも、その手際の良さ、ランチのバリエーションが裏付けている。また、カフェmanmaでの展示会やセラピー、お話し会、手作り講座、健康関連のイベントなど、実はお客さんが次々と提案してくださるのだという。ご本人曰く「実は人見知り」というのは信じ難いのだが、来たる者は誰であれ一旦受け止めることができるのがさすがに保育のプロ、久美子さん持ち前の包容力なのだろう。
かつて鬱蒼としていたお寺に灯をともし、大きなソフトクリームコーンのオブジェを置き、人が繰り返し訪れる居場所カフェを作った人。近くに暮らす私は大いに刺激を受けている。
ご参考→ https://www.instagram.com/manma_kumiko/
(2022年6月1日 記)
カフェmanma のコーヒーチケット